警察が個人の銀行口座を凍結する場合には「振り込め詐欺救済法 」を根拠に各銀行に凍結依頼を出します。振り込め詐欺救済法の全文に関しては、預金保険機構が掲載しているのでそこから見ることができます。法律文章なので読みづらいです。
2021年現在では表示法律名が「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」 に統一され「振り込め詐欺」という文言はなくなったようです。
目次
どのような口座が凍結対象か
振り込め詐欺救済法で取引停止となる口座はどのような口座なのか、見ていきます。
犯罪収益が疑われる口座は全て対象
銀行口座を停止する根拠となる法律名に「振り込め詐欺」とあるので振り込め詐欺関係の銀行口座だけが凍結対象と誤認してしまいそうですが、そうではありません。振り込め詐欺以外の犯罪においてもこの振り込め詐欺救済法で口座を凍結できます。
1つ凍結されたら全口座凍結されると考えましょう
凍結対象になる口座は犯罪に利用された、またはそうと疑われる口座です。しかしながら一つの口座が凍結されるとその人の全ての口座が凍結されるのが通常となります。
その口座から家族に仕送りしている、決まった人物に定期的に送金している場合、共犯と疑われればそれらの人の口座も凍結されるでしょう。
元々振り込め詐欺の被害者が泣き寝入りしないように、少しでも返金されるように早急に犯罪口座を凍結して資金の流れをストップしてしまおう、というのがこの法律の成立意図です。
これが拡大解釈され振込詐欺以外でも凍結され、実際は犯罪に関係のない生活口座や給与口座まで凍結されて、生きていくことにすら支障が出るという事態も発生しています。こうした状況を改善するよう動いている弁護士もいるようですが、現実は凍結優先、疑わしきは凍結で全口座凍結、というのが基本対応になってます。
凍結は通報から1-3営業日で実行される
各銀行の対応も早く、警察から凍結依頼があれば1-3営業日で凍結することが多いです。気づいたら凍結されていたということになります。
凍結されると銀行からは振り込め詐欺救済法、第二章 預金口座等に係る取引の停止等の措置に基づいて凍結しました、という文章を簡易書留で送ってきます。
具体的な凍結対象の銀行口座
- 振り込め詐欺に使われた口座
これは簡単です。振り込め詐欺で詐取されたお金が入ってる口座です。
直接被害者に振り込ませた口座はもちろん、その口座からの入金のある口座も凍結対象です。
被害者に直接振り込ませない形でも被害金が入っていると特定された、または疑惑のある口座も凍結対象になります。
- 他人に売った口座
口座売買自体が犯罪ですので売買された口座であれば凍結されます。上に述べたように一つ凍結されれば、個人の全口座が凍結されるのが基本ですので売買してない口座も凍結です。
- 犯罪による収益が入っている口座
これは範囲が広いのですが、例えば窃盗したものを換金し、そのお金を振り込んでいる口座なんかがそれにあたります。恐喝で巻き上げたお金、詐欺で奪ったモノを売って得たお金が入っているなどが該当し、凍結されます。
銀行口座はどんな根拠で凍結されるのか
マジでそんな手続きで凍結できちゃうの!?と思える凍結フロー。
根拠不要でお手軽に凍結される
口座の凍結において銀行の審査はありません。銀行は凍結依頼が出されれば、何も確認せず、即座に凍結してきます。全国銀行協会が発行している「振り込め詐欺救済法における口座凍結手続きについて」という資料がネットに転がっているのですが、以下に該当する場合は、 すみやかに口座凍結を実施、とあります。
「捜査機関、弁護士会、金融庁および消費生活センターなど公的機関ならびに 弁護士、認定司法書士から通報があった場合」
つまり警察のみならず弁護士などから通報があった場合、銀行はその口座が疑わしいかを確認することなく凍結するということです。つまり警察や弁護士の言いなりになりますということです。銀行に判断裁量はなく、銀行の良心に期待しても無駄だということは頭に入れておきましょう。
令状も不要、通報すれば凍結というお手軽さ
全国銀行協会の資料や法律を読む限り、銀行口座停止に裁判所の令状は必要ありません。つまり警察が「凍結しとこー」と思えば簡単に凍結できるということです。第三者がその凍結が妥当か否か、判断を下すフローが存在していないのですから。
自宅に入って、証拠品を差し押さえたり回収したりするのですら、裁判所の令状が必要です。なのに個人の銀行資産は令状無く全て機能停止にできる点で、この法律の割と無茶苦茶な感じはよく理解できると思います。