示談や情状酌量のための謝罪文の書き方とタイミング

犯罪を犯せば司法による裁きを受けます。しかしその刑量は「どのような犯罪を行ったか」だけでなく「犯罪を行ったことを反省し償う意志があるか」にも左右されます。さらには被害者の処罰感情、「被害者が加害者に対して厳罰を望んでいるか」も考慮されます。

どのような犯罪を行ったかについては過去のことなので変えられませんが、反省や被害者の処罰感情の緩和は逮捕された後からでも可能です。裁判の証拠としても提出され情状酌量に効果があり、被害者の処罰感情を和らげる手段が謝罪文の作成です。

謝罪文提出のタイミング

逮捕された後、できるだけすぐ執筆し提出するのが理想です。被害者側としても早々に謝ってこられたほういいと思います。非を認めたら迅速に謝るというのは社会人の基本マナーです。ただあまりも逮捕後すぐだと”あからさま”過ぎるのでそのあたりは被害者との関係性を考慮して判断すべきです。

すぐに謝罪文を出したほうがいいもう一つの理由は、不起訴になりやすいからです。謝罪文を提出し、その中で被害金の賠償などを約束すると被害届を取り下げて貰える場合があります。被害届が下げられた事件は警察も捜査をやめる傾向にあるためそのまま不起訴=裁判にならず無罪となる可能性が高くなります。

被害届の取り下げが遅いと既にほとんどの捜査が完了してしまっています。警察としてはせっかく労力を割いて裏付け捜査をし、調書を作成したのに有罪にできなくては無駄骨になる、ということで起訴に踏み切ることがあります。こういった理由からも謝罪文の提出は早いに越したことはありません。

謝罪文作成で絶対必要なポイント

犯罪被害者への謝罪文なんてものは人生でそうそう書くことはありません。学校での反省文や会社で事故経緯報告書などのを書いた人はいっぱい居そうですが。刑事事件の謝罪文の書き方のポイントを整理しておきます。

謝罪文は直筆で書くべき

留置所で書く場合はそもそも直筆でしか書けませんが、PCでの打ち込みはNGです。理由は直筆は誠意が伝わるから、です。気持ちの問題です。理論的には解明されてませんが人間は直筆から誠意を感じ取る生き物のようです。

ボールペンで誤字脱字省略なく書く、修正もNG

鉛筆やシャープペンシルはダメです。鉛筆やシャーペンは学校のノートに書くための筆記用具であって社会の一般的な文章には使用しません。誤字や脱字も誠意がないと捉えられるので、間違った場合は書き直します。黒塗りや修正液で訂正したりするものダメです。

漢字は部分的に省略して書いてしまう人が多いと思いますが、これまた誠意に欠くと判断されるので、一字一字、丁寧に書きましょう。分からない漢字があれば辞書で調べます。留置所では辞書は貸してもらえます。

キチンとした便箋を用意する

ノートを破ったような紙では被害者を苛つかせてしまうので、しっかりとした便箋を用意しましょう。横書きと縦書きはどちらでもOKです、受け取られる誠意に差は出ません。便箋は留置所内の自弁システムで購入できる他、弁護士や家族から差し入れてもらいます。

謝罪文作成で気をつけたいポイント

謝罪文を作成し提出することが目的ではありません。目的は情状酌量の獲得や処罰感情の緩和です。これらを達成するために押さえておきたいポイントを紹介します。

謝意や反省を表明する

謝っても謝りすぎることはない、というのは謝罪文の基本です。少なくとも冒頭と文末には謝意を表す言葉を入れましょう。謝る言葉として「申し訳ありませんでした」「陳謝致します」あたりが使えます。「すみませんでした」や「ごめんなさい」は文章では使うべきでないので気をつけましょう。

反省の文章としては「今後の人生において同様のことは行わないと誓います」は使えるワードです。「反省しています」って言われても反省してるように感じないのは人間あるあるなので、上記のような文言で反省を表すと良いですね。

事件を起こした原因が分かるようにする

なぜ自分や自分の家族が犯罪に巻き込まれたのか知りたい、というのは被害者感情としてよくある話です。犯罪を起こした動機というのはある程度書くべきでしょう。ただ動機があまりにも利己的で自分勝手なものである場合は被害者を怒らせてしまうだけなので、うまくオブラートに包んで書くと良いでしょう。

自分のせいにする、言い訳しない他人や社会のせいにしない

謝罪文あるあるなのですが、自分を棚に上げて他人や社会に責任を押し付けるような文章になってしまいがちです。例えば「会社の業績が良くなく首になってしまった。失業保険もすぐにおりず、お金に困り犯行を行った」という文章の場合悪いのは会社や役所だという風に読めます。

「そういった苦しい中で自分を律することができず、犯罪に手を染めてしまったことは恥ずべきことだと感じている」というような記載をしておけば、結局悪いのは自分です、と読むことができ。責任を転嫁するような無責任さは薄れます。

謝罪文の具体例

それでは業績不振で会社を首になり、お金に困ってある民家に窃盗に入って現金を盗んだ被疑者を想定して謝罪文を書いてみます。こんな感じでしょうか。

謝罪文

○○様

この度は私の犯した窃盗事件にて多大なるご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ございません。ご不快に思われるかとも思いますが、謝意及び被害金弁済の意をお伝えしたくお手紙をお送りさせて頂きました。

逮捕そして警察や検察での取り調べ、勾留中の時間を通じて改めて自分の犯した罪の愚かさや、○○様に多大な恐怖や苦労を与えてしまったことを痛感致しました。誠に申し訳ございません。

昨年夏に業績不振で会社を退職し、自らの技量不足、経験不足から新たな就職先も決まらないなか、安易に現金を得る方法として他人から盗むという選択をしてしまいました。自分を律する能力のなさ、被害者の方の苦しみを想像できない未熟さを痛感し反省しております。

○○様の被害金については当然のことですが全額弁済させて頂きたく思います。犯行の際に生じた物損の費用についてもすべて支払わせて頂きます。支払金については親族、知人から一時的に借りることで合意しておりますので、迅速に全額お支払いできる見込みです。

この度は私の犯した窃盗にて甚大なるご迷惑、ご不安をおかけしたこと陳謝致します。今後の取り調べでも嘘偽りなく証言し、司法での判断をもって罪を償い、以後の人生において同様のことは行わないと誓います。本当に申し訳ございませんでした。

謝罪文を出せない場合もある

謝罪文は自らが被害者に送るのではなく、弁護士を通じて被害者に送付します。謝罪文のコピー及び被害者に送付した内容証明を証拠として裁判に提出する形になります。

謝罪文を送るには被害者の合意が必要です。弁護士から検察を通じて被害者に「謝罪文送付のために弁護士に住所を教えてよいか」と聞いてもらいOKとなった場合のみ謝罪文を送付できます。

当然加害者からの手紙なんか要らないということで拒否する被害者もいます。例えば性犯罪の被害者の場合はほとんどが謝罪文拒否になると思います。同じ留置所に女性の下着を盗んだ人がいて、謝罪文を出したいと言ったそうですが断られてました。普通の物の窃盗なら弁済して不起訴になることが多いですが、下着とかだと被害者から拒否されて弁済すら不可能になるということですね。

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