殺人や強盗など大きな事件であれば別ですが、窃盗や軽微な詐欺など常習性のある犯罪は余罪が大量にある、ということがあります。
殺人の懲役が30年くらい、窃盗の懲役が1年だとすると窃盗100件で100年!常習的な窃盗は殺人より重い!とはならないのが日本の司法です。
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余罪での再逮捕は多くて2〜3件
余罪が100件あり、全て自白してる場合でも警察が捜査し再逮捕するのは多くても2〜3件です。残りの余罪については特に触れることなく終わります。私の場合も逮捕しようと思えば数十回は可能でしたが逮捕は2件、起訴数も2件という結果でした。
余罪を全て捜査しない理由としては、単純にそんなにたくさん捜査できないからということが大きいです。いくら自白があったとしても警察は安易に逮捕できず、検察も起訴できません。逮捕、起訴するためには自白以外の客観的証拠も必ず必要になるからです。
後でも述べますが一連の犯罪の場合、裁判を1つにまとめて量刑も総合的に判断するのが基本です。併合罪として処理する、という言い方をします。3件再逮捕しても100件再逮捕しても被疑者に対する量刑はほとんど増えません。
つまり自白のあった事件を捜査して証拠を集めて逮捕、起訴しても被疑者の量刑にはほとんど影響を与えないのですから、わざわざやる必要ないよね、というのが司法機関の基本的な考え方です。
人権侵害だから何度も逮捕しないという考え方
逮捕というのは被疑者の留置所に拘束する、とても強い権限です。1人の被疑者に対して逮捕権を何度も行使するのは人権侵害だ、という見方もあるようで、このためやたらめったら再逮捕するという事態にはなりません。何回も逮捕すると検事がうるさい、と刑事が言ってました。
余罪による再逮捕と弁論併合
余罪、再逮捕を考える際には、必ず知っておくべき司法論理があります。それが弁論併合というものです。
弁論併合:裁判は余罪含め1つにまとめられる
複数回逮捕されても、逮捕事案が一連の犯罪の場合、つまり何度も泥棒に入ってるとか、何度も同じ手口で詐欺をしているとかであれば裁判は一つにまとめられることが多いです。これを弁論併合と呼びます。
また量刑も2件だから2倍というものではなく総合的に判断されます。例えば懲役1年程度の詐欺を二つ犯しており、2つとも逮捕され裁判は弁論併合されているとします。
この場合の懲役は1年半程度が妥当です。単純に2倍の2年という考えにはならず総合的に判断されます。日本の司法は犯罪の数だけ加算に加算を重ねるというシステムではない、ということです。
余罪は自白した方がお得
上記を踏まえると、言い方はアレですが余罪に関してはお咎めなしになるということです。逆に余罪を黙っておくと、その黙っている事件の捜査は進行したままで、結果再逮捕されてしまうということがあり得ます。
そうなると弁論併合されず別の裁判で裁かれることになります。この場合は量刑が単純加算されてしまうこともあるので余罪を黙っておくことは得策ではありません。
再逮捕見込みや弁論併合の説明は弁護士の役割
余罪による再逮捕の考え方や、再逮捕された事件の裁判が一つにまとめらるといった事項は、普通に生活していて知ることはありません。これらの知識や概念を理解すると、余罪は全て自白してしまったほうがいい、という判断もできるようになります。
一方で被害者の処罰感情が強かったり、世間的に大きな事件であれば、余罪事件として捜査を終えること無く、証拠を集めて延々と再逮捕を繰り返すケースもあります。
余罪、再逮捕、弁論併合についての見解を述べ、被疑者本人や家族に道筋や今後の展開を想定するのは弁護士の大事な役割です。