刑事事件の弁護士に担ってもらうべき最大の役割は最善の裁判結果になるよう、被疑者本人や家族に道筋を示すことです。なんとか子供や大事な人を助けたい、無罪にしてください、なんてのはドラマだけの話で弁護士の力で無罪になる刑事事件なんてものはほとんどありません。
ここでいう最善というのは、被害者との示談を成立させること、有罪判決を受け入れたうえで執行猶予を獲得すること、逮捕された被疑者やその家族がメンタルを保ったまま裁判終了まで過ごせることなどです。
目次
弁護士に担ってもらうべき具体的な役割
示談交渉
刑事事件には被害者がおり、被害者の処罰感情が警察の捜査や、検察の求刑量に大きく影響してきます。
そこで弁護士に加害者と被害者の間に入ってもらい、被害者の処罰感情を和らげ、示談による不起訴を目指すべきです。仮に不起訴にならず起訴され裁判になったとしても、被害者の処罰感情を和らげることで減刑にするのが弁護士の役割です。
示談や処罰感情緩和に必要なのは、加害者による早急な謝罪文の提出と、被害弁済や示談金などお金です。示談交渉は逮捕後直ぐに動くことができます。
具体的な流れとしては弁護士が示談交渉をしたい旨を検察に申し出ます。検察が被害者の承諾を得れば弁護士側に被害者の連絡先が通達されます。加害側と被害側が弁護士を通じて連絡を取れるようになります。
早急に示談に持ち込まなければ、被害者感情が硬化してしまいますし、警察の捜査も進んでしまい起訴へ向かってしまいます。
示談なんて基本的なことは弁護士がまずはじめに提案してきてくれる、なんて考えは甘く、示談したい旨を伝えないと動いてくれない弁護士も沢山います。被疑者本人や家族が弁護士にしっかりと役割を与えましょう。
併合罪の利益を活用する
複数の罪を犯していても、それらが一連の犯行であれば、一括で裁判をして、一括で罰を下すという法倫理があります。
例えば窃盗を30回繰り返していれば30回逮捕され30回裁判され懲役が30回分加算されるのかといえば違います。窃盗30件を自白していても起訴されるのはせいぜい2-3件でそれで全て終わります。
その2-3件は一括で裁判され一括で判決がでます。このときの判決内容は窃盗1件の罪の1.5倍かせいぜい2倍くらいの懲役になることが多いです。30件窃盗していても結果的に1.5~2件くらいの罪で収まる、これが併合罪の利益です。
警察に聞かれないからといって余罪をすべて自白していないと、裁判が終わった後にまた逮捕されるということが起こり得ます。この場合、また別に裁判が行われ懲役刑が単純加算されることもあります。黙っていたことで罪が併合されなかったためです。つまり後追いで逮捕されないためにも全て自白し切った方が罪が軽くなります。
こういった仕組みを弁護士が被疑者に説明してあげないと後々後悔することになります。一般人には分からないけど司法では当たり前、ということは多いので弁護士から色々聞き出す必要があるわけです。こういう司法テクニックを弁護士に求めていく必要があります。
保釈請求の進行
保釈とは起訴されたあと保証金を担保に裁判終了まで釈放される制度です。保釈が裁判所に許可されるためには、否認していないこと、身元保証人があること、裁判所から遠すぎない住居があることなどが必要条件になります。
保証金が用意できなければ貸してくれる団体もあります。こういった事項を勾留中から前もって弁護士と詰めておく必要があります。
執行猶予の獲得
罪を犯した者を救える最も現実的な手段です。執行猶予とは懲役3年以下の判決の時、その執行を猶予し、猶予期間が終われば懲役刑が免除される仕組みです。
例えば懲役2年、執行猶予4年であれば、4年間問題を起こさず過ごせば懲役を免れる事ができる=刑務所には行かなくていい、という意味です。前科が消えるわけではありません。あくまで懲役が免除されるだけですが、拘束されずに自由に生活が送れます。
執行猶予を獲得するには条件があります。条件は特に法律に明示されているわけではありませんが慣例というものがあります。初犯であること、罪を認め反省していること、真っ当に働く意思があること、執行猶予期間中に監督者がいること等、いわゆる情状酌量の余地が必要です。
逮捕された後、意地になってもしくはワンチャン不起訴を狙って否認や黙秘を続けることもあるでしょうが、そうした態度では執行猶予の見込みはありません。
目指すべきゴールを執行猶予に置き、そのために被疑者を説得し罪を認めさせ、警察や検察に反省の態度を示させることも弁護士の大事な役割です。
以上のように弁護士にやってもらうべき役割を明確にした上で、相談したりお願いしたりすることが重要になります。