被疑者として留置所へ勾留された時、すぐやるべきことの一つに弁護士の選任があります。塀の外の世界と繋がるためには弁護士を媒介するしかありませんので弁護士は非常に重要です。
目次
弁護士に求めるのものは無罪獲得ではない
まず一番に考えるべきは、弁護士になにを求めるのか、ということです。刑事事件で弁護士の最も華やかな結果は「裁判での無罪獲得」でしょう。でも実際は、無罪を目指すことなどほぼありません。
具体的な目標は示談成立、執行猶予獲得など
弁護士に求める現実的な最終目標は、おおよそ
・被害者との示談を成立させて被害届を取り下げてもらい不起訴に持ち込む
・罪判決を受けても執行猶予を獲得することで実刑を免れる
・実刑はしかたないとして少しでも懲役期間を少なくする
といったところが妥当です。私の勾留中、同じ留置所に居た人で裁判になっても無罪を主張する、という人は1人もいませんでした。
弁護士によって裁判結果が変わることは少ない
テレビドラマなんかだと無罪を勝ち取る弁護士が有能だ、というイメージがあります。しかし現実問題として弁護士で裁判結果が大きく変わる、ということほとんどありません。
一般的な犯罪において判決までに開廷される裁判の回数は3回程度です。その中で弁護士が話す機会なんてほとんどないです。
一度刑事裁判を見に行くと分かりますが「裁判において弁護士なんて誰でもよくない…?」という感想を持ちます。それほど弁護士の出番というのは裁判では発生しないのです。ドラマとは違います。
弁護士に求めるべきは被疑者や家族のサポート
よって弁護士は、家族との連携を密に取ってくれることや、法律知識や判例などをきちんと適宜説明してくれること、保釈に動いてくれること、執行猶予を取るために取り調べや裁判での質疑応答に関して、アドバイスをしてくれることあたりを重視しましょう。
裁判での弁護というのは弁護士の仕事のほんの一部に過ぎません。弁護士の任せるべき仕事の大部分は裁判以外の様々なことなのです。
私選弁護士と国選弁護士の違いを理解する
刑事事件の弁護士種別には私選と国選の2種類があります。それぞれ条件、費用、メリデメを知ることで違いを理解しておく必要があります。
私選弁護士を選任できる条件
私選弁護士を選任するための条件は特になく、弁護士が弁護を引き受ける意思があり、被疑者側が弁護費用さえ払えば誰でも雇うことが可能です。
私選は弁護士を名指しで指定できます。知り合いの弁護士がいなければ、弁護士協会を指定してやってくる人に頼むか、当番弁護士といって弁護士協会から留置所に派遣されてくる人に頼むこともできます。
私選であれば家族や知人が弁護士を調べて依頼することもできますが、調べて依頼して実際に面会して、また相談して決めてたりすると、あっという間に10日ほど過ぎてしまい、取り調べの相談もできずに終わってしまうのが難点です。
私選弁護士の費用
私選弁護士の費用は弁護士によって変わります。20日勾留で目的が示談成功、保釈成功、執行猶予獲得あたりですと着手金+接見に係る費用+成功報酬等で合計100〜150万円が相場でしょうか。
接見に関しては1回2万円などの場合もありますし、20万円で何回でも可といった体系を採用している弁護士もあります。否認事件は扱いが難しいので費用は高くなりがちで、控訴や上告も視野と言った場合長期化するのでこれまた高くなります。
私選弁護士のメリット
私選弁護士のメリットは、直接弁護士を名指しで指定できるという点です。知り合いに信頼できる弁護士がいる場合は私選弁護士の有用性は強いです。
知り合いに弁護士がいない場合は結局弁護士協会から送られてくる人に頼むか、調べて良さそうな人に依頼することになり、メリットは薄れてしまいます。
費用は高額なので、基本的に動きはよく、呼べば留置所に面会(接見)に来てくれますし、家族との連絡も密にしてくれます。法律の説明や、今後の流れなども丁寧に説明し、判例なども多く教えてくれることが期待できます。
私選弁護士のデメリット
費用が高いです。ざっと見積もっても100万という額は簡単に出せる額ではありません。どれだけよく留置所に足を運んでくれても、どれだけ家族と密に連絡してくれても、それが裁判結果に大きく影響を及ぼすかと言われると首を縦に振ることはできません。それを鑑みてその費用を出すのか、ということを考える必要があります。
国選弁護士を選任できる条件
国選弁護士を付ける際には資力申告書というものを提出します。資力とは現金、預金、株などの有価証券等を合わせた資産合計のことです。この合計額が50万円を超える場合、国選での選定は認められず自費にて私選弁護人を付けないといけません。
49万円なら国選OKなのに50万円ならNGというガバガバのシステムです。但し留置所内ですので自身の正確な資産は調べることができません。通帳の写しなども提出せず、あくまでその場での自己申告なのでテキトーに49万円以下で書いてしまうというのが普通になってます。
また、50万円以上の資力があったとしても、私選弁護士に弁護を断られるなどの理由がある場合には国選弁護士が選任されます。例えば私選弁護士に「10万円で受けてくれ」とお願いして断られても、私選弁護士をつけられなかったと判断され国選になることもあります。
国選弁護士の費用
国選弁護人は国が費用負担するため無料です。但し何らかの理由で資力があるのに国選弁護士が選任された場合は、地方裁判所での裁判終了後、弁護士費用を国から請求されます。国選弁護士の地方裁終了までの費用は10万から15万円くらいです。
国選弁護士のメリット
無料であること、もし弁護士費用を請求されても10万円程度と私選弁護士に比べて安いことがメリットです。
国選弁護士のデメリット
自分では選べず、裁判所が指定した弁護士にのみ国選弁護士をお願いできます。国選弁護士は留置所内で弁護士ガチャと言われるほど、良い人とやる気のない人との差が激しいです。
家族との連絡は手紙で勝手にやれと言われる、保釈の話を一切してくれない、理由も説明せず保釈は無理だと突っぱねる、何度接見要望を出しても面会に来ない。こんな国選弁護士もマジで居ます。実際にこういうハズレ弁護士を引いてしまった被疑者の人を知ってます。
国選弁護士の報酬は10万程度。やる気が無くなるのもわかりますが…
私選弁護士と国選弁護士の簡易比較表

ざっくりまとめると、弁護をお願いしたい弁護士がいるならその人に私選弁護をお願いする。そういう人が居なくても、サポートの安定性を求めるなら私選弁護士。費用重視なら国選弁護士という感じです。
一番良いのは国選弁護士を選んで有能な良い人がつくことです。これは運です。